日韓食べ物戦争、在日韓国農食品連合会が“韓食の守り神”に

THE FACTメディアJAPAN | 2016/09/14 17:04

 

在日韓国農食品連合会の金永璡(キム・ヨンジン、左)会長と程禎珌(チョン・ジョンピル)副会長。

 

日韓食べ物戦争、在日韓国農食品連合会が“韓食の守り神”に


[スポーツソウルジャパン|安・ビョンチョル記者] 日本最大のコリアタウンであり、韓流のメッカと呼ばれる新大久保。そこに行けば、韓流という流行りの具体的な実体が自分の目で確認できる。市場が求めるニーズを人より一歩先に速く読んで実現しなければならない商人たちが、韓流という巨大な流れを小さな商品に凝縮させて街あちこちで販売しているからだ。


新大久保の代表的な商品を大きく3つに分類すると、K-POPや韓国ドラマを中心とした“エンターテインメントコンテンツ”、「美人の国」というイメージを前面に出した“美容用品”、優れた味と品質を誇る“韓国の食べ物”に分けられるが、その中で特に韓国の農産物や加工食品は最近日本で大きく成長している分野だ。これまでの店舗中心の運営から脱して通信販売への領域に進出したことが、韓食の日本浸透を促進させ、同業界の成長を引っ張っている。


在日韓国農食品連合会によると、31の会員社が昨年韓国から輸入した農食品や加工食品などは約135億円。大型流通企業でない中小企業があげた成績としては信じられないほどの高い数値だが、さらに驚くべきことが、これらの企業が通信販売用のカタログ冊子を日本全国に約60万部以上を配布しているという事実だ。これは、在日韓国人を中心に流通してきた韓国の食べ物が日本人消費者の間でも急速に広まっているという証でもある。


このような“韓食”の日本普及には、韓国ドラマとK-POPなどが中心になった韓流ブームの影響を見逃せない。 2002年の「冬のソナタ」をはじめ、日本を熱狂させた韓流ブームが韓国料理に対する関心と好奇心のきっかけを作った。しかし、急速に、ほぼ抵抗なしで、日本人の間で広がることができたのは何よりも在日韓国商人の数多くの試行錯誤と粘り強い根性が前提されなかったら、不可能な結果であった。その中には“韓国のもの”を守ろうとする韓国人としての熾烈な努力も目撃され、「韓食の守り神」という評価まで受けている。


去る7日、<スポーツソウルジャパン>は、在日韓国商人の求心点の役割を果たしながら、韓国の食文化を日本に伝える中心的組織として生まれ変わった「(社)在日韓国農食品連合会」を訪れ、韓国農食品の現在と未来について聞いてみた。


●零細商人たちの懇親会が年間売上高250億円の巨大ネットワークに
在日韓国農食品連合会を一言で表現すると、「日本最大の韓国系流通ネットワーク」だ。同連合会は現在、31の韓国系流通企業が加入しており、2012年度基準で250億円以上の売上高を誇る。2013年には韓国からの輸入代金として約135億円を支出し、今では在日韓国経済を率いる力強い組織として位置づけられている。


見事な成長ぶりを見せて発展してきた同連合会だが、最初から“華やかな”団体ではなかった。90年代中盤から日本に定着し始めたいわゆる「ニューカマーたち」が、誰も彼も流通業に参入したため、市場の秩序が大きく崩れ、それを正してみようという趣旨の懇親会を作ったことが今に至った。


同連合会の程禎珌(チョン・ジョンピル)副会長は「今から二十年前、日本で自生した商人たちが作った懇親会が在日韓国農食品連合会の母胎となった。当時は韓国人を対象にした生計型の商人たちが大多数であった。人気商品である韓国のラーメンや焼酎などは皆が手を出して、その結果、自ら墓穴を掘るような値下げ競争が段々激しくになった。ますます市場の秩序が崩れていく姿に自制の声が出始め、対話を通じて健全な商業活動を保障する窓口として懇親会を構成したのが今に至った」と同連合会のスタートについて説明した。

 

在日韓国農食品連合会の金永璡(キム・ヨンジン)会長

 

零細韓国人商人たちに大きなチャンスが2000年代初頭に相次いで訪ねてきた。日韓ワールドカップ共同開催と、韓国ドラマの大ヒットで日本で巻き起きた韓流ブームがそれだ。同連合会の金永璡(キム・ヨンジン)会長は、「これまで日暮里や新宿などを中心に活躍していた零細韓国商人たちが、事業拡大に拍車をかけた。日本の有名デパートや流通会社との連携、通信販売などを通じて事業拡大を図って、オフ・オンラインでのビジネスを並行しながら着実に内実を固めた。生計型の韓国商人たちが企業型への転換を図った時期もその頃。ちょうどその時期に吹いてきた韓流熱風が韓国農食品の需要をさらに拡大させる追い風になった。パイが大きくなるにつれて、過度の競争より健全な商業活動がさらに求められたし、市場拡大のための共同商品開発や流通段階整備なども急務であるという認識が会員社の間で生まれ始まった。会員流通社の声を一つに結集する必要性がさらに台頭しており、2005年、正式に法人を設立して、“在日韓国農食品連合会”を発足させることになる」と同連合会の設立背景を説明した。


●日韓食べ物戦争、在日韓国農食品連合会が“韓食の守り神”に
韓国系流通企業の発展は、韓国農食品の日本普及につながった。有名な韓国のノリやラーメンをはじめ、冷麺、参鶏湯、チャプチェ、チヂミはもちろん、トッポッキ、ホットク、マッコリまで、近くの大型スーパーやデパートなどでいくらでも入に入れることができるようになった。しかし、市場が大きくなることによって、日本の流通企業の進出も活発になり、その影響で韓国の食べ物が日本の食べ物に化ける危機が何回もあったという。


代表的な事件が「海苔ジャバン」(*のり佃煮の一種)の“商標登録先取り事態”。程副会長は、「韓国農食品が市場でその価値を認められるにつれ、日本の大手流通企業も市場参入の機会を虎視眈々と狙うようになった。その中で、ある日本メーカーの視野に入った食品が、海苔を乾かしたり揚げたりした韓国の『ジャバン』だった。全ての商品がそうだが、海苔ジャバンの場合は、我々団体の会員社が数年の試行錯誤と努力をかけて、日本市場への浸透に成功させた代表的な商品。ところが、その日本のメーカーが2012年頃に『ジャバン』を商標として登録しようという動きを見せながら正式に商標申請を行ったのだ」と当時の状況を説明した。


もし、海苔ジャバンを日本のメーカーが先に商標登録を済ませたらどうなるか?程副会長は、「これまで、我々の会員社は、『ジャバン』という韓国の食べ物を日本の消費者に知らせるためにデパートのイベント、無料試食、各種のパンフレット発行など、たくさんの努力と時間を注いだ。その結果、やっとジャバンという食べ物を日本の消費者が認識し始めた段階だった。しかし、ジャバンの名前を日本のメーカーが持って行ってしまうと、「ジャバン」という商標を付けた商品の輸入が基本的に不可能になり、商標の使用のためにはロヤルティを支払わなければならない。もちろん、他の名で輸入する方法があるが、商品説明や宣伝を最初から再びやるしかない。何よりも大きな問題は、韓国の『ジャバン』が日本の『ジャバン』に変わる可能性が大きくなることだ」と商標登録を先にやられた場合の恐ろしさを説明した。


幸いなことに、日本のメーカーの動きを速やかに読み取った在日韓国農食品連合会は、駐日韓国大使館と本国の農林部を通じて日本政府から商標登録不許可の方針を受け止めた。


●最も大きな効果は韓食広報機能
在日韓国農食品連合会の活動が「韓食の守り神」と評価される理由は、韓国語をそのままブランド化して、日本に流通するからだ。マッコリやトッポッキ、チャプチェなどは、すでに日本人の間で何の説明なしで韓国の食べ物として受け入れられている。


金会長は「マッコリ、チャプチェ、トッポッキなどは、我々の会員社が一番最初に使った商品の名。マッコリはマッコリ(막걸리)であり、トッポッキは、トッポッキ(떢볶이)だ。簡単に考えると当たり前のことだが、日本ではそんなに簡単ではない。商品化するとき、バイヤーとのコミュニケーション、商品説明のための広報などが前提しなければ、トッポッキはトッポッキとして存在することができなくなる。連合会の会員企業は、主要事業である通信販売を通じて、約1000種以上の韓国農食品を日本の消費者に販売している。もちろん韓国語の発音そのままに、或いは韓国語表記+日本語表記で販売している商品もある。企業の大前提は利益を図ることだが、同連合会は広報とマーケティングを総合・戦略化する過程で、韓食を守りながらも利益を創出する道を見つけた」と韓国食文化の広報機能を同連合会の最大の特徴として強調した。日本の多くの人々がまだキムチを日本固有の食べ物として認識している事実を考えると、韓国語商標の使用は思った以上に大きな意味と価値を持つ。


同連合会の主な設立目的は、韓国系流通企業の利益誘導。しかし、同連合会の経済活動はいくつかの良い効果をもたらしてくれる。まず挙げられる効果は、前述のように韓国の食文化の広報機能が伴うことだ。これは、自然に韓国の農産物や関連加工食品の輸出の増加につながる。


金会長は「韓国自治体のたくさんの農家と企業は、良い品質の商品を持っている。しかし日本への輸出を望んでも、その方法を知らなくて諦めているところが多い。包装方法や表記、製造工程表の作成などの簡単な作業もできなくて、輸出自体が不許可になる場合が多い。それで連合会は、彼らと直接会う席をたくさん設けて、必要な検査や提出書類などの単純作業からマーケティングや市場反応などに至るまでのあらゆる専門的な知識をコンサルティングしている」と対日輸出に対する役割を自負した。

 

在日韓国農食品連合会の程禎珌(チョン・ジョンピル)副会長。

 

二番目に挙げられる効果は、韓国の農産品を日本に紹介する過程で商品化の基盤を築くということ。金会長は代表的な例として、「マクワウリ」を挙げながら、「以前はマクワウリが日本でも栽培されたが、最近ではほとんど流通していない。栽培農家がほとんど高級品種のメロンに乗り換えた影響もあり、最近の日本の若い世代はマクワウリを知らない人が多い。その点に着目した連合会の会員社たちがマクワウリを数年前から日本に持ってきた。


まず、在日韓国市場を中心に流通し始め、市場の反応を察した。周辺の日本人たちにも徐々に広がり、マクワウリが思った以上の反応を得ると、日本のスーパーやデパートなどにも納品した。しかし、結果は惨敗だった。広報や品の搬出時期などについての戦略なしで大量の品を輸入したので、マクワウリに手を出した企業は大きな打撃を受けた。しかし、あきらめず、そのような過程を何度も繰り返しながら、供給時期やプロモーション戦略、流通段階などを確立した。その結果、今年は農協(韓国)と手を組んで本格的な日本市場への参入を準備している」とし、同連合会の架け橋役割を強調した。


3番目は、同連合会のネットワークを介した商品テスト機能だ。本格的な商品の流通の前に市場の反応を確認できるということは、品質管理からフィードバック機能まで、ほぼ完璧な準備が可能になるという意味。程副会長は、「多くの会員社が、新大久保をはじめ、日本国内に多数の店舗を運営している。韓国人が運営する韓国スーパーだが、売り場を訪れるお客さんのほとんどは日本の消費者。韓国の自治体や食品製造企業が日本への輸出を準備しながら、最も重要視べきのが現地化戦略だ。商品のパッケージから味の評価、品質管理などは、調査しにくい部分でもあるが、連合会のネットワークを利用すれば、試作品の消費者反応を迅速に得ることができるし、品質向上にもつながる。生産者や流通者の両側にWin-Winの結果をもたらすのだ」とし、韓国の自治体との積極的な連携を通じた純機能部分に注目した。
 

●難関に直面した韓国商人たち
韓国商人たちの粘り強い努力と在日韓国農食品連合会レベルでの積極的な支援を通じて、勢いに乗っていた韓国系流通企業は最近、大きな難関に直面している。続いている日韓関係の悪化ムードが市場の縮小につながっているからだ。


金会長は、「これまで私たちは販売商品に日本語と韓国語を同時に表示してきた。韓流ブームと共に韓国に対する評価が高まり、韓国語表記自体が良い宣伝効果をもたらしたからだ。しかし、両国の関係が梗塞した後には、韓国語を商品から消去するしかなかった。商品の供給者という立場では、市場の声を反映しないとならない。韓国の臭いがしたら、消費者はともかく、バイヤーたちが物品搬入に難色を表し始めたのだ」と韓国語を表記したくても表記できない背景を説明した。


しかし、韓国語を排除しても市場縮小を防ぐことができなかったという。代表的な韓国農食品であるマッコリの場合は売上高が半分に落ち、主力商品でさえ最近の円安の影響で、さらに困難さを増している。金会長は、「昨年末から急激に変動し始めた為替レートによって、基本的に25%以上の損害を抱えている。それに政治的な対立から発した市場縮小で、前と比べて50%以上の売上高の減少が続いている。韓国商人たちが抱えている金銭的な苦痛は計り知れないほどだ」とため息をついた。
程副会長も「一部で流通業界のリスクを警告している理由も、大きな打撃を受けているのをわかっているからだ。一日も早く、この難局を打開するため、すべての努力が必要な時点だ」と現在の苦痛を吐露した。


在日韓国農食品連合会は、両国の劇的な政治的和解をただ待っているより、自分たちの手で難局を打開する道を選んだ。3月から開始する、世界最大の食品展示会「Foodex」と6月予定の日本デパートでの韓国商品展を通じて、危機をチャンスに変えようとする積極的な動きに乗り出した。また、韓国の農林部とaTセンターの積極的な支援を基に、2012年から開始した物流センターの運営にも拍車をかけ、日本進出に必要な確固たる足場を用意するという意志も示した。


金会長は、「設備を一つの場所に統合することができれば、相当なコスト削減にもつながるし、物流の集中を通じた流通拡大と市場開拓を同時に成し遂げることができる。例えば、購買力が高くない地方の小さなスーパーや小売店では、一度に大量の品を購入することに抵抗感が強かった。しかし、いくつかの品をまとめたセット商品を少量で提供することができれば、地方にまでも市場が拡大する可能性が開かれる。そのような部分を、物流センターの運営を通じて期待する」と物流センターへ大きな期待を寄せた。

 

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