巷で“キムチの女王”と呼ばれる岡本優子氏の韓国サラン・キムチサランインタビュー

THE FACTメディアJAPAN | 2017/12/19 13:22


最近、日本の各地から招かれ、キムチ作りや韓国文化などを教える岡本優子さん。その彼女が留学中に抱いた韓国サラン(愛)・キムチサランについて聞いてみた。


最近、日本の各地から招かれ、キムチ作りや韓国文化などを教える岡本優子さん。その彼女が留学中に抱いた韓国サラン(愛)・キムチサランについて聞いてみた。


-優子さんの日ごろの活動内容について教えて下さい。
主に2ステップで作れる簡単なニラキムチの講座及び韓国の家庭料理などを紹介しております。お料理の作り方だけでなく、韓国ではどういう時に食べられる料理なのかなど、韓国の文化や留学中のエピソードなどを一緒に紹介しています。


-活動を始めた契機は何ですか?
もともとお料理が好きで、長男の重度のアレルギー(卵・牛乳・小麦・米・魚・ピーナッツのアレルギー。アレルギー値が通常の1,000倍の数値と言われました。食事療法が功を奏し、今はほぼ何でも食べられるようになりました。)をきっかけに卵・乳製品を使わないお料理を習い始め、その延長でインストラクターコースにも通いました。そしてママ友達などに頼まれた時だけ、仕事がお休みの日に小ぢんまりと料理教室を開催していました。そんなある時、私が韓国に留学していたことを知っている生徒さんからキムチの作り方を教えて欲しいとのリクエストがありました。お料理の内容柄、お友達たちもアレルギーっ子のママであったり、食に対して気を使っている人が多く、「スーパーのキムチにはたくさんの添加物が入っているし、本場の味とは全く違う。」との理由で、キムチの作り方を教えて欲しいと言われました。

キムチの作り方を教えるにあたって、忙しいママたちでも家事の合間を縫って簡単に作れるものがいいなと思ったので、なるべく工程を省いて材料もシンプルに、簡単に作れる白菜キムチのレシピを考えました。リクエスト講座だったのでたった2人だけのレッスンでしたが、Facebookにその様子を上げると予想外の反響があり、また開催して欲しいとの声を頂くようになりました。

数回行った白菜キムチのレッスンでしたが、なかなか白菜の塩漬けが上手くできないとの声(講座では予め私が白菜を塩漬けしたものを準備していました。私にとって当たり前にできる事でしたが、他の人にとってはそうではないことを初めて知りました。)があり、さらに簡単にキムチを漬ける方法はないかずっと考えていました。その中で思いついたのがニラキムチです。ニラキムチは私の大好きなキムチの1つで、旨味があってとっても美味しいのに、日本ではあまり知られていないので、日本人は絶対好きな味なのに残念だなと思っていました。また、ニラは白菜よりも手軽に扱え、年中手に入ります。キムチにするのにも材料も工夫し、唐辛子とニラの他にはたった3つの材料、日本のスーパーで簡単に手に入る物にしました。またレシピもニラを切って瓶に入れ、調味料を入れて混ぜるだけの2スッテップに改良しました。

講座をする中で韓国料理はどこで習ったのかとよく聞かれますが、特別に習ったことはありません。ただ普通の留学生よりお友達の家に呼ばれてご飯を食べさせてもらう機会が多かったことはあげられると思います。韓国には2度留学しましたが、2度目のソウル留学時代はご厚意でお友達のおばさんの家に下宿をさせてもらい、その際もよくご飯を作って下さいました。因みにキムチの作り方はお仲人さんが韓国の方で、1度だけキムチの作り方を教えてもらったことがあります。
日本に帰ると無性に韓国料理が恋しくなることがあるので、日本のスーパーで手に入るもので再現していました。お料理教室で教えているレシピのどれもが私にとっては何気ない家庭料理の1つに過ぎないので、正直ここまで人気になるとは思っておらず、生徒さんたちの反響に私自身が一番驚いています。


-活動をしながら記憶に残る思い出や伝えたいメッセージなどがあればお願いします。

◯割烹でキムチ講座を教えたこと
Facebookでキムチ講座が広がる中、近所の老舗料亭(山口の人はみんな知っている)のご主人からキムチの作り方を教えて欲しいとのオファーがありました。何年も修行された料理人さんを相手にお料理を教えるのはとても緊張しましたが、キムチやチヂミの作り方や材料に驚いてもらえたり、お料理の情報交換をするのはとても楽しい時間でした。「美味しい」と言ってもらえた時は一安心。ほっと胸をなでおろしました。
後日、その時一緒に作った水キムチをお客様に出されて、とても好評だったとの連絡があった時には本当に嬉しかったです。この時のキムチレッスンの様子をご主人がFacebookにあげてくださり、「キムチの女王」とのあだ名を付けてもらいました。そこからますますキムチの輪が広がり、県内だけでなく、九州や関西、関東での講座が実現しました。


◯広がるキムチの輪
Facebookには講座の様子だけでなく、ニラキムチを使ったアレンジ料理や私が家で作った韓国料理などをあげていました。すると、これまでの参加者さんたち同士の間でも同じようにニラキムチを使ったアレンジ料理(ビビンバやクッパ、ワインに合うトマトやアスパラのキムチ…など)をFacebookにあげたり、お料理の感想やアドバイスなどを通して交流が始まりました。また常備菜として必ず冷蔵庫に作り置きしているとの声や、家族にも大好評という報告も数多く頂きます。


人気の高いニラキムチは手軽に作れるヘルシーフード


一年前に講座を始めたキムチ講座(平日は仕事をしているので週末のみの開催)の参加者さんはいつの間にか100人を超えました。その後ろには少なくても200~300人の笑顔があると思うととても嬉しくなります。(正直、日本人の食生活にこんなにキムチが浸透しているとは思いませんでした…私もそんなにしょっちゅう食べる訳ではないのに...)この講座をしていなければ地方在住の一主婦である私がこんなたくさんの人に会うことはなかったと思います。またニラキムチが私を色んな場所に連れて行ってくれました。たくさんの経験をさせてくれた‘ニラキムチ’に感謝です。


◯韓国のお友達からも励ましのメッセージ
この活動を始めてから韓国のお友達からもたくさんのメッセージをもらうようになりました。
「優子の活動をとっても嬉しく思っている。」「すごく美味しそう。食べてみたい。」「優子が楽しみながらキムチの活動をしていることはたくさんの人が韓国を理解することにも繋がるし、差別や偏見もなくなると思う。」などなど。たくさんの励ましのメッセージや「これを作ってみて!」と美味しい料理のレシピを教えてくれることもあります。
韓国から帰国して今年で10年経ちますが、こうして再びキムチを通して韓国のお友達とも繋がることができとても嬉しいです。


-今後の活動目標について教えて下さい。
◯素朴な韓国家庭料理の紹介
韓国料理のイメージは一般的に辛いものというイメージが強いですが、辛く無くて美味しいものもたくさんあります。グルメ番組などでサムゲタンやチーズタッカルビなど辛くない料理も知られるようになりましたが、私はまだまだ紹介されていない韓国ではよく食べられる素朴な家庭料理を中心に、韓国の文化と一緒に紹介して行こうと思っています。
既にトッポギやホットクのリクエストも頂いており、一般家庭でも簡単に作れるようにレシピを改良中。またFacebookにあげていたチャンアチがすごく人気で気になっている人がたくさんいるので、また講座をして欲しいとの声もあります。


山口の歯科医師会の皆さんもニラキムチ作りに挑戦中


◯海外でのキムチ講座
Facebookを通してまだ顔を見ぬ海外にいる後輩からも「キムチを教えにカナダに来て欲しい」という話も耳にしたので、夢のまた夢ですが、いつか海外でも講座ができたら嬉しいです。


◯今の韓国を発信
結婚してからは子育てのためしばらく韓国からは遠ざかっていましたが、横浜から山口へ引っ越したこともあり(関釜フェリーの利用で仕事帰りに韓国に行けます)、ようやく韓国旅行も楽しめるようになりました。10年間ブランクのあった韓国の情報をアップデートしながら、これからはお料理だけでなく今の韓国を発信していきたいと思っています。


-それでは、最後に人々に伝えたいメッセージをお願いできますか?
もともとリクエストで始めた講座なので日韓の架け橋という大きな志があるわけではありませでしたし、正直、全く自分の専攻とは違うので、「何でこんなことをしているんだろう?」と思うことが何度かありました。しかし、キムチ講座をしていく中で料理にはとても大きな力があり、可能性があることに気づきました。美味しいものが嫌いな人はいませんし、人は美味しいものを食べると笑顔になり、幸せな気持ちになります。
韓国に留学していた時に友達から「満員電車で足を踏まれたら、踏んだ人は気づかないかもしれないけど、踏まれた人は痛いし、それを忘れない。日本と韓国の関係もそれと同じじゃないかな?」と言われたことがありました。日本人にとって韓国のことを知るということはとても大切なことだと思います。「知る」ということはまた相手に対する思いやりの気持ちでもあると思います。キムチ講座を通して参加した人たちが、幸せな気持ちで韓国を知る一つのきっかけになるのであればこんなに嬉しいことはありません。



【岡本優子】
山口市生まれ。山口県立大学在学中に韓国に留学。中央大学大学院で修士取得(メディア研究専攻)。共著書に『Korea,おもしろい韓国語』(朝日出版)などがある。
*インタビューの整理は東京学芸大学の李修京教授によるものである。

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